2026-02-20
現在の楽曲MIXの工程
楽曲MIXの実作業フローを、ゲインステージングや音量調整などの工程ごとに整理して紹介した記事です。

はじめに:現在の楽曲MIXの工程
この記事では、私が行っている楽曲MIXの基本的な作業フローを整理しています。
実際の制作でどのような順序で処理を行っているか、また現在意識しているポイントと今後の課題についてまとめます。
1. MIXプロジェクトへトラックを読み込む
作曲プロジェクトから各トラックを書き出し、専用のMIXテンプレートプロジェクトへ読み込みます。
テンプレートにはあらかじめ以下のサミングスタック(BUS)を用意しています。
- Vocal
- Drum
- Bass
- Chord
各トラックはこれらのBUSへルーティングされており、BUS単位でEQやコンプレッサーを適用したり、音量調整をまとめて行えるようにしています。

2. ゲインステージング
MIXの最初の工程としてゲインステージングを行います。
VUメーターを使用し、平均レベルが 約 -18dBFS になるように入力レベルを調整します。
これにより、コンプレッサーやEQが適切に動作する入力レベルを確保します。
ドラムなどピークの強い音については、ピークレベルが -10dBFS前後 になるように調整します。
この段階では大まかな調整のみ行い、細かいバランス調整は後の工程で行います。

3. 音量バランス
各トラックの音量バランスを調整します。
通常はフェーダーで調整しますが、私は トラックの最後段にGainプラグインを配置して音量を管理しています。
理由は次の通りです。
- 後のオートメーション調整が管理しやすい
- EQやコンプレッサーへの入力レベルを変化させない
この方法により、処理順序の影響を受けずに音量管理を行えます。

4. EQ(帯域整理)
次にEQで不要な周波数帯域を整理します。
目的は主に以下の2つです。
- 不要な帯域のカット
- トラック同士の周波数衝突の回避
単体では良い音でも、複数トラックが重なると濁りが発生するため、全体のバランスを見ながら調整します。
EQについては基本的なテンプレートを用意しており、初期処理を効率化しています。

5. コンプレッサー(ダイナミクス制御)
EQで帯域整理を行った後、コンプレッサーでダイナミクスを整えます。
ダイナミクスとは
**時間軸上の音量変化(ピークと平均の差)**を指します。
コンプレッサーによりピークを抑えることで
- 平均レベルを上げやすくする
- 音の安定感を向上させる
といった効果があります。

6. パンニング
各トラックを左右に配置し、空間的な分離を行います。
基本配置は以下の通りです。
中央
- Vocal
- Kick
- Snare
- Bass
左右
- Guitar
- Arpeggio
- FX
パンニングによって各トラックの衝突を防ぎ、空間的な広がりを作ります。

7. リバーブ(空間処理)
空間的な奥行きを作るためリバーブを使用します。
基本的には Send方式 を使用し、複数トラックを同じリバーブに送ることで空間の統一感を作ります。
例:
前面
- Vocal
- Kick
- Snare
中間
- Guitar
- Main Synth
後方
- Pad
- FX
これにより立体的なミックスを構築します。

8. BUS処理
Vocal / Drum / Bass / Chord のBUSに対して処理を行います。
BUSでは
- 軽いコンプレッション(接着効果)
- 微調整EQ
などを行い、トラック全体をまとめます。

9. ミックスバス処理
全トラックが集約される MIX BUS に対して、非常に軽くバスコンプレッサーをかけます。
目的は音のまとまりをわずかに強化することです。

10. オートメーション
楽曲の展開に合わせて音量オートメーションを調整します。
例
- Aメロ:-0.5dB
- サビ:+1dB
など、楽曲の盛り上がりをコントロールします。

11. ヘッドルーム確認
最終段階では 最大ピークを -6dBFS 前後 に調整します。
理由は、マスタリング工程で
- リミッター
- マスターEQ
などを使用する余裕を確保するためです。
0dBFSに近い状態では後処理の自由度が低くなってしまいます。

今後の課題
1. サチュレーション設計
現在はEQとコンプレッション中心の処理ですが、今後は倍音付加による質感設計を研究します。
目的
- デジタル的な硬さの緩和
- 音の前後感の強化
- 密度の最適化
2. トランジェント制御
コンプレッサーだけでなく、トランジェントシェイパーを用いて
- アタック
- サスティン
を分離制御する研究を進めます。
3. ステレオイメージ管理
現在はパンニング中心ですが、今後は Mid/Side処理 を用いた立体的な音像設計を研究します。
4. リファレンス分析
感覚だけに頼らず、リファレンス楽曲との比較を行い、客観的なミックス精度の向上を目指します。